2020年度 活動記録 ー 第1回研究会

2020年10月9日(金)16:30-18:30開催(Zoomによる遠隔会議方式)

<参加者(敬称略)>
大西和夫(ゲスト講師、国立感染症研究所免疫部客員研究員)
小菅隼人(センター所長、理工学部、英文学・演劇学)
荒金直人(センター副所長、「文理連接」担当、理工学部、哲学・科学論)
鈴木晃仁(「文理連接」企画、経済学部、医学史)
見上公一(「文理連接」企画、理工学部、科学技術社会論)
高橋宣也(センター副所長、文学部、英文学)
寺沢和洋(センター副所長、医学部、放射線研究)
井奥洪二(自然科学研究教育センター所長、経済学部、環境科学・医工学)
光田達矢(経済学部、ドイツにおける肉食の社会文化史・動物感染症の歴史)
宮本万里(商学部、政治人類学・南アジア地域研究)
沼尾恵(理工学部、政治哲学・寛容論)

16:30〜17:15 「感染症の基礎知識」(大西先生)
 (1) 新型コロナウィルスの流行
 (2) 「ウィルス」について
 (3) 病原体と感染症
 (4) 「免疫」について(自己と非自己)
17:15〜17:45頃 大西先生への質問
17:45頃〜18:35  参加者全員での自由な議論

大西先生によるレクチャーでは、新型コロナウイルスをはじめとする具体的な事例についてのお話を交えながら、より一般的に、感染症を引き起こすウイルスの構造や種類、感染と免疫の複雑で興味深い仕組み(自然免疫と適応免疫)、特に免疫的「自己」としてのMHC(主要組織適合遺伝子複合体)の働きと多様性などについて、詳しい説明がなされた。多くの図や表を用いた非常に分かりやすい説明であり、同時に、専門的な知見やデータに裏付けられた確かさを感じさせるものだった。一例を挙げるなら、ウイルスの毒性が時間とともに弱まることで宿主の生存率が高まり、そのことによってウイルスの増殖率が高まるという、ウイルスと宿主の共生関係の構築への動きに関する説明が、非常に興味深かった。約45分間のレクチャーの後、その内容に関して多くの質問がなされた。とりわけ、新型コロナウィルスの特徴やその社会的な衝撃に関する質問が多くなされ、感染症に関わる様々な専門分野間の関係についての質問もあった。続いて、より自由な議論が展開した。感染症流行の社会学的側面や文学的表象に関する指摘、感染防止対策における寛容や過剰な危機意識の問題、ウイルスと人間の共存関係の根深さについての指摘(胎盤の形成の例)、ウイルスの発生源と名称についての質問、スペイン風邪やペストとの比較についての指摘、新型コロナウイルスという出来事の特徴に関する指摘(「9.11」との比較)などがなされた。参加者全員による独自の視点からの発言があり、非常に興味深く有意義な議論がなされた。次回、第二回研究会は、11月6日(金)の同じ時間帯に、鈴木晃仁先生による話題提供を出発点として企画されることが確認された。

(以上、文責は荒金)