2020年度 活動記録 ー 第2回研究会

2020年11月6日(金)16:30-18:30開催(Zoomによる遠隔会議方式)

<参加者(敬称略)>
小菅隼人(センター所長、理工学部、英文学・演劇学)
荒金直人(センター副所長、「文理連接」担当、理工学部、哲学・科学論)
鈴木晃仁(「文理連接」企画、経済学部、医学史)
見上公一(「文理連接」企画、理工学部、科学技術社会論)
井奥洪二(自然科学研究教育センター所長、経済学部、環境科学・医工学)

16:30〜17:15 「Covid-19のパンデミーと食肉の問題」(鈴木先生)
17:15〜18:30 鈴木先生への質問および参加者での自由な議論

鈴木晃仁氏はCovid-19 を食肉の問題から論じた。食肉を、感染症という文脈から見た時、まず、5つの論点があげられる(参照:鈴木晃仁「Covid-19 のパンデミーと食肉の問題」『コロナ後の世界:いま,この地点から考える』筑摩書房編集部編,2020)。ここには、①食肉を通しての感染、②労働現場の密閉、③移民が食肉労働者層を支え得ているという事実、⑤輸出による国際性の拡大である。

これらの問題のほか、さらに、食肉工場の歴史の問題とその背景が指摘された。すなわち、(1)食事の重要性を説きつつ、食事を蔑視するという二律背反性を内包するキリスト教の伝統、(2)19世紀アメリカの近代化を背景にして農業が飛躍的に発展し、食肉が輸出されるようになった国際性、(3)19世紀アメリカとヨーロッパにおける豚の寄生虫の問題、がある。これらの問題の間で、死亡した患者の皮膚を製本に用いた医師の例も挙げられた。食肉の問題は、科学の問題だけではなく、倫理的な問題を伴い、その意味でまさに教養の問題でもある。

質疑応答も非常に活発に行われ、そこでは、田舎における食肉動物への接触機会の低下、逆に都会におけるペットの死へ立ち会うことの機会の増加も指摘された。Covid-19 は当初、中国武漢において、コウモリ由来のハクビシン経由によって感染が始まったという説もある。これは、食文化の多様性への批判という文脈でCovid-19 が引用される危険もあることが指摘された。これに対して、鈴木から、Calvin W. SchwabeUnmentionable Cuisine が紹介された。

(以上、文責は小菅)